【特別対談】長谷川×K-PRO児島 インタビュー

今年で結成17年目を迎えるお笑いコンビ、クレオパトラ。2014年、12年間所属したよしもとクリエイティブ・エージェンシーを辞め、フリーの道を選んだ。劇団エンニュイの主宰、ライブハウス・CHARA DEの運営など、現代におけるお笑い芸人のあり方を開拓し続ける長谷川と、お笑いライブシーンを牽引し続けるイベント会社K-PRO代表の児島氏の対談を行った。それぞれが芸人、主催者という視点を超えて語る、孤独や葛藤、そしてお笑い業界の現在と今後の行く末に注目したい。



2018年9月8日に開催されるクレオパトラ第11回単独公演「散文的な景色、詩的な歩行」のプロモーションを兼ねた特別対談。

僕も鬱憤があった


児島:長谷川さんはライブハウス・CHARA DEを運営されてますが、なぜ劇場を作ったんですか?

長谷川:元々劇場やりたいって桑原とは話してたんです。そしたら桑原が芸人辞めるって言ったのと同時期ぐらいに、アニメストリートの人が「テナント空いてるんですけど、何かやりません? 劇場とか」って言ってくれて。事務所も辞めたから、自分たちの事務所っていうか基地っていうか、作業もできて稽古もできる場所が欲しいよねって。しかもその頃ちょうどSEKAI NO OWARIが流行ってたので(笑)

児島:なるほど(笑)

長谷川:で、やってみたら、芸人たちがそこで面白いものを試せたりとか、ちょこっと稼げたりとか、そういうハードル低い劇場にできたらいいなっていう気持ちに変わっていって。フリーの芸人を呼んで周りとつなげたりとか、あと僕らのやり方を見て、またやる人が増えたりとかする場所になったらいいなって。そこからちょっと俯瞰で見るようになったというか、後輩のためにっていうのが強くなったかもしれないですね。

児島:後輩のために場所を作らなきゃとか残さなきゃっていうのはありますよね。私も人が集まる場みたいなのが好きで。別に、そこで私がノリノリで何かをしてるわけじゃないですけど、人が楽しそうにしてくれるっていうのがすごく好きなので。でも私はやりたくても行動に移せないので、羨ましいなと思います。目先のことに追われたり、どうせやるならこういうのって理想を膨らませすぎたりして。だから実際にできてることはすごいことだとわかります。今までのお笑い界から変えるんだったら、やっぱり新しい発信の場をどんどん増やしていかなきゃいけないと思うんで。

長谷川:ありがとうございます。

児島:ツイッターとか見ててもみんな毎日楽しそうですしね。

長谷川:一時、みんな暗かったですよね。

児島:そうですね。

長谷川:みんなどこかに居場所ができて明るくなってきましたよね。


──そういう芸人さんの状態というのはわかるものですか?


児島:見えてきますよね、結構。あからさまな雰囲気もそうですし、無理に笑ってくれてる顔とかもなんとなく分かるというか。自分で言うのもあれですけど、実家の母ちゃんみたいな感じじゃないですか(笑)

長谷川:あはははは(笑)

児島:そういう時に心折れないように、ひねくれないようにだけはしないとなと思って、声かけたりはしてますね。そういう人たちにクレオパトラさんをもっと知ってもらいたいっていうのがあるんですよ。やっぱり事務所の先輩とかじゃない限り、なかなか芸人さんって他人の舞台を見に行ったりはしないんですけど、こういうことをのびのびやってる人がいるよとか、こういうことをやって自分自身が楽しめてる、人を笑わせたいという気持ちを湧かせることができる人がいるっていうのも知ってほしいというか。事務所には自分もテレビ出たいのに出れないって悩んでる先輩が多いんですけど、ちょっと目を横に向けるだけでこういう人もいるというのを知れるので。

長谷川:そうですね。でもちょっと前までは僕も鬱憤があったので、みんなにストレートに伝わらなかったです。芸人はやっぱり自分のやってることを肯定したいじゃないですか。でも僕らのように自由にやってる人を肯定したら、自分を否定することになる可能性がある。「俺らは真面目にネタを書いて、やりたいことも我慢してるのに、あいつらみたいに好き勝手やってるのをOKとしちゃったらどうなるんだ?」っていう。そう思う人も多かったと思うんですよ。でも僕が最近削ぎ落とされてってるんで、伝わりやすくなって、賛同してくれる芸人も増えてきたと思います。


──それはなぜ削ぎ落とされたんですか?


長谷川:欲がなくなったのかもしれないです(笑)

児島:でもそうですよね。それは絶対あると思います。

長谷川:それから演劇界とか別の業種の方で、僕が元々尊敬していたり好きだった人たちに出会えて、その人たちが凄く理解してくれて褒めてくれたというのも大きいですね。今までは、これだけ頑張っても誰も認めてくれないし誰も味方がいないと思ってたので。


──その変化はいつぐらいからですか?


長谷川:2年前ぐらいから徐々にですかね。他業種の方と一緒に仕事した時に、お笑いのこういうところって面白いんだ、僕のやってる作品はこういうところが面白いんだっていうのをどんどん知れて。どんどん自信がついてきて。で、僕がもっと褒められたいとか認められたいって思ってるのってダサいなと。尊敬する素敵な人たちが認めてくれてるんだから自信もってもっと胸張って生きないとと思いました。たくさんの人に認められたいという欲を持つのは、その人たちが良いって言ってくれてるのに失礼っていうか。

児島:刺激を受ける相手って結構変わってきますよね。昔は隣にいるライバルだったりすると思うんですけど、だんだん広い世界が見えてくると、この人に認められたい、みたいなのは変わってきたり。自分が憧れてた人に面白いって言われるのは一番嬉しいし、力になりますよね。

長谷川:間違ってなかったんだと。だから今やってて思うのは、お笑いって今の形になってまだ長くて90年ぐらいだと思うんですよね。だけどそれを賞レースとかそういう商品としてはわかりますけど、みんなが型にはめすぎてると思って。最初はいろんなものを組み合わせて漫才とかそういうものが出来上がってったので、お笑いっていうジャンルにしながら面白いものはまだまだできあがっていうくと思うんですよね。ネタのテーマがないよとか、設定がないよとかで寂しい思いをするんじゃなくて、もっと面白いものを作れるよっていうのは知ってほしいです。わくわくしてほしい。

児島:そうなんですよね。若手お笑いとはこういうもの、って括られないでのびのび表現できる芸人さんもいっぱいいると思うので。そういう人たちにはどんどん外を見てほしいなと思いますね。

長谷川:昔ながらの型にハメに行くんじゃなくて、新しい型をみんなで作りたいんです。そうやって一人ひとりが自分のやりたいものを楽しそうにすればするほど、活性化されていくっていうか。じゃあ俺も楽しいとこ見つけようってなって。そしたらそれが商品になっていく。要は楽しむことが罪ではなくて、罪悪感なしにとりあえず楽しんだほうがいいんじゃないかなと思います。



新婚から熟年夫婦に


児島:吉本にいた時から結構自分で動いてたんですか?

長谷川:動いてましたね。なんかバランスよくやろうとしちゃって、動くけど、ネタライブはちゃんと頑張らなきゃとか。頑張るからには上に行かなきゃいけないから、ウケなきゃいけないなとか。ウケなくても芸人が面白いって言ってくれるじゃあ満足できなくなっていって。そうするとやっぱりベタなネタになったりとか、ブレたりとか……いろいろしましたね。一通りやったんじゃないですかね(笑)

児島:でも確かに、私の中でもクレオパトラさんっていわゆる世界観的なのよりも、普通にオンバトとかで勝つようなネタをやるような、わりと漫才のベタな、フレーズ的なイメージがありましたね(笑)。

長谷川:あれもすごい頑張りましたね。みんなに聞いたらボケ数だって言うので、じゃあ今好きなコントじゃ無理だなってなって。それで漫才をやろうかと。

児島:でもそれって地肩になると思います。若いうちからもうこっち路線だって決めてるよりは、長い目で見たらすごい力になりますよね。

長谷川:そういうのが嫌いな人も多くて、上位を獲っても叩かれたりすることもあったり、いろいろ体験して面白いなと思いました。

児島:最近、若い人たちと、そこそこちゃんと経験を積んだいわゆるベテラン芸人さんとで、わりと二極化してるんですけど、ベテラン芸人さんのほうは自分たちのやりたいことをやっていこうっていう人が多いなという感じはします。それの先駆け的な行動を起こされたのがクレオパトラさんじゃないかなと思っていて。当時は事務所の若手ライブに出ているのも観ていたし、番組でも若手の勝ち上がりバトルで戦っていたイメージもあるけど、今こうやって事務所を辞めて活動してるっていうのは、自分たちのことをよく考えてるんだろうなと。誰かに管理してもらおうとか、誰かが何かチャンスくれるんじゃないかっていう人たちは、やっぱり行動には移さないと思うので。

長谷川:最初の頃は「あいつらなんだよ」って言われたりとかしましたけど、やる人はだんだん多くなってきて。でも多くなればなるほど、ただ好きなことをやればいいんだって思ってる人ばかりで。断片的に、これやったら誰か食いついてくれてお金稼ぎになるんじゃないかとか。表面的に似ていても、僕らは本能的にやりたいことやって、それがお笑いにちゃんと結びついて、でも世に知ってもらいたいから動いてるだけで、お金を稼ぎたいから動いてるわけじゃなくて。もっと広く見たらもっと面白いのになと。

児島:お笑いでお金を稼ぎたい”職業としての芸人さん”と、本質的に表現者な”生き方としての芸人さん”に分かれてはいるなとは思います。クレオパトラさんは特に自分たちの見せ方とか、こういうことをしたいっていうのがすごくはっきりわかってる人だなっていうのは公演を見ていて思うし、その中での面白さをちゃんと追求できてるんで、そこはかっこいいなと思いますね。

長谷川:今までは中途半端だったんで、僕もこれで食えたらいいなとかありましたけどね。相方の人生背負ってたし。でも桑原が就職してからはもう吹っ切れたというか。僕は僕で、作家業でもなんでも稼げばいいんで。そしたら表現活動は自分たちが納得して面白いものをやらないと、っていうふうに変わって、後押ししてくれる人も増えてきた。まあちょっと寂しさもありますけどね。売れるとか賞レースとかがなくなったので、それに向かって一生懸命やってる人を見ると、いいなあとは思いますね。

児島:コンビは夫婦って言いますけど、新婚から熟年夫婦になったみたいな感じですね(笑) それぞれの人生の楽しみ方があって、でも守るものはある、みたいな。そこの覚悟がちゃんと見えるので、応援したくなるっていう気持ちはわかりますね。

長谷川:僕はもう山奥で陶芸やってるような人になってるので(笑) 好きな形の売れるかわからないものを作ってて。若手の子達は頑張って既定の型の中ですり減らして、どういうデザインがウケるかとか考えながら何mmかを削って削って作ってるので。それに比べたら僕は自由にやってるから何も言えないですけど(笑) まあ、だからこそ言えることもあるんだとは思うんですけどね。

児島:そうだと思います。だし、それを好きで山奥まで買いに行く人がいるっていうのがすごくかっこいいことだと思います。ただ好きでやってるわけじゃなくて、ちゃんと買いに来てくれる人がいるし、そういう人を増やすことをしてるっていう。

長谷川:山奥に来てくれる人はごく少数ですけどね(笑)



お笑いだけ妙に遅れてる


長谷川:ただ最近、みんなもっと自分たちがどういう人間か発信すればいいのになと思ったりします。Twitterやってるだけで安心しちゃったりしてますよね。もっと宣伝の仕方があるのに。世に知ってもらうということを諦めてる感じがするんです。ファンだけが増えても世の中には届かない。

児島:それがお笑いっていう業界の遅さというか遅れてる感ですよね。お笑いだけ妙に遅れてると思います。アイドルとか音楽業界はどんどんやってるので。そこで一番ネックなのがやっぱりプロダクションだと思うんですけどね(笑) ダメダメって言ってることが多すぎて、囲われてる芸人さんは行動できないということは多い。

長谷川:もうちょっとしたら事務所とかなくなってくんじゃないですか。

児島:個人で売っていけたら一番いいですしね。

長谷川:エージェントみたいな感じになって。

児島:事務所も、あのマネージャーさんがいいからって入るわけじゃなくて、先輩がいるとか、仕事が回ってきそう、とかで選ぶ人が多いですけど、自分のことをどれだけ理解して売ってくれるマネージャーさんがいるかとか、そっちが本来なんじゃないかなと思います。信頼できる人がどれくらいいるかみたいな。

長谷川:みんな事務所に入るっていうのをゴールにしてたりとか。

児島:入ったらプロ、みたいなことですよね。

長谷川:入れたら、次は事務所のランキングで1位になるのが目標だったり。

児島:進みが遅いですね、全体的に。制限みたいなのも多いですし。自分で交渉をする世の中になってくるような気がしますね。

長谷川:ちなみに児島さんは、なんでフリーの大会を始めたんですか?

児島:去年から始めたんですけど、ゲレロンステージっていういわゆるK-PROライブに出たい人たちが出るオーディションライブにもフリーの芸人さんが多くて、こんなにいるんだなって思った時に、じゃあ「フリーNo.1」って言ったらどれぐらい引きがあるのかなと思ってやったらすごく集まって。そこに事務所のマネージャーさんとかも観に来てくれてたりしたので、チャンスやきっかけにもなるんだなと思って続けたという感じですかね。フリー芸人にもこんなに面白い人たちがいるんだよって言えば、フリーっていうものの価値が多少は上がるかなと思って。

長谷川:いっぱいいますもんね。

児島:でもやっぱりみんな事務所に入りたいとは言うんですけどねー(笑)

長谷川:芸人って二面性を持ってて、ずるいんです。「僕らは芸人としてやってるんで」って言う時があれば、何かをやれば? って言ったら今度は「いや、タレントなんでそういうはことしないです」って言う。言い訳が多いっていうか(笑)常にダブルスタンダードというか。

児島:逃げられるんですよね(笑) やっぱり古きよきもあれば、絶対よくない古い縛りもあったりするので、そこを取っ払ってどう行動に移せるかみたいなところは課題にはなると思いますね。「YouTubeとかで動画出してみれば?」って言っても、「いや、僕たちはインターネットじゃなくてテレビ目指してるんで」みたいなことをいまだに言うというか。やっぱり新鮮さが大事、動画はネタを”消費する”みたいなイメージで。でも結局ブームが生まれるのって動画だったりインスタグラムだったりする。そこで何人の人に見てもらってテレビのチャンスがあるかっていうのは、わかってはいるけど行動に移せないっていうのは絶対あると思います。

長谷川:それに芸人って、YouTubeはお金を稼ぐものだと思ってるところがあるんですよ。宣伝するために使えば、別に再生数なんて少なくていいじゃないですか。いつか必要な時に見れる素材をいっぱい用意しておくっていうものだと思って僕はやってるんですけど、今の芸人さんは「いや、今やっても再生数いかないから。だって0.7円とかでしょ?」って言う。素材として、自分をアピールするものとして、必要なものだと思うんですけど。

児島:そうですね、タダでも経験、タダでも資料になるなら、っていうとこだと思いますけどね。

長谷川:昔だったらビデオテープにして渡さなきゃいけなかったから、それに比べたら本当すごい楽ですよね。

児島:みんなダビングして配ってましたもんね(笑)

長谷川:そういう意味では芸人って、地域で何かイベントをやる時に「俺らは俺らのやり方があるから」って言う町役場の人みたいな感じですよね。

児島:確かに(笑)

長谷川:それはそれで素敵なので、その職人気質のよさを仲介する人たちがいないといけなくて。

児島:だからコミュニケーションをちゃんと取るっていうのは永遠の課題ですよね。話せばわかるって絶対あると思うので、そこをさぼっちゃうとよくないなって。私もできるだけちゃんと話をするっていうのは大事にしてますね。

長谷川:だいたいみんな真面目で良い奴ですからね。

児島:私は小さい時からどこのグループに属するわけじゃなく、クラス全員と話すのが好きではあったんで、そういうことって大事だなとは昔から思ってはいましたね。

長谷川:僕もそうでしたね。

児島:暗い子とか、気持ち悪い本読んでる子とかも話しかけてました(笑)

長谷川:その人のよさを知りたいんでしょうね。引き出すことが楽しいっていうか。例えばその本を読んでる子が、ヤンキーグループのあいつが好きそうだなってつなげて、話して盛り上がってるのを見たら、めっちゃいいなあって(笑)

児島:わかる(笑)

長谷川:ライブと似てますね。

児島:うん、私それでいうと、先生に紹介してました。「あの子、将来海外に行きたいらしいですよ」みたいなことを学校の先生に言うと、「じゃあ英語の授業で本読む時やってもらおうかね」ってなったり。

長谷川:今と変わらないんじゃないですか?(笑)

児島:変わらないかもしれないですね(笑)

長谷川:天職ですね。



口に猿ぐつわしながらお客さんにムチ持たせて、

「俺のケツ叩いてくれ」って


児島:でも私がK-PROとしてライブを立ち上げた当初は、各事務所ライブかラママぐらいしかない時代にそこへ出れない奴らが勝手に集まって何かやってるっていう、”端っこのやつ”だったのに、続けていってお客さんが来てくれることによって、だんだん王道のイメージになってきて。「K-PROって正統派だよね」とか「売れそうな人しか出ない」みたいなことを言われるようになった時はめちゃめちゃ悩みましたね。やりたいことがやれないというか。「児島さんってすごくいい人よね」とか「本当にお笑いが好きなんですね」とか「売れる人を見る目があるんですね」とか言われても、そっちが好きでやってるわけじゃなくて。本当はもっとディープな人とか、ただ気持ち悪いだけの人とか、バカにするようなお笑いとかも見たいんですけど。だから王道って言われちゃうのがすごく嫌だった時期はありました。でも今はやっぱりそこは崩せないし、それも大事だって思ったり、役割だなとも思うんですけど。やりたいことはできなくなってくんだなって(笑)


──売れっ子の悩みですね。


児島:お客さんが入るイメージが強くつきすぎて、お客さんを入れなきゃ、入れなきゃ、ってすごいプレッシャーになっちゃったり。でもお客さん入れなきゃいけないんだったら、呼ばなきゃいけない芸人さんも決まってきちゃうし。そこの悩みはめっちゃありましたね(笑)


──今はどうですか?


児島:今は若い世代の芸人さんが出てきたから、1からスタートできるようなライブもできてきて。そういうライブもあるよって、いろいろやれるようになったので、峠は越した感じはあります。

長谷川:そういうのありますよね。例えば若手が売れてる芸人に対して「王道だからダセーよな」って言ってたら、実は元々はすごいアングラの人だったりとか。めっちゃ面白いじゃん昔、とか。そこがあるから今そうなってたりとか。

児島:そうですね。


──児島さんにそういう苦悩があったとは、今のファンは知らないでしょうね。


児島:結構長いことやってるから、その始めた頃を知ってる人は本当にもういないですね。散々ね、言われてきたりとかしましたし。やりたいこともできないし。「どうせ俺らなんて呼んでくれないんでしょ」とか、昔から仲よかった芸人さんに言われたりとかもして。それはね、辛いは辛かったですけど。でもまあ、今続けられてることがすごいことだと自分でも思うので。そこは大事にしようかなと思いますね。

長谷川:一緒です。常に孤独ですよね。

児島:孤独ですね、やっぱり(笑)

長谷川:なんか同じ目線で話せないですよね。なんかちょっと構えられるというか。こっちは何も思ってないけど、もしかしたら普通にやってる芸人のことをバカにしてるって思われてるかもしれないし。逆なんですけど。そういう人たちを尊敬してるから何とかしたいっていう。でもいろいろ見透かされてると思われてたりとか。そうするともう黙って仕事するしかないですよね(笑)

児島:うん、そう(笑)

長谷川:でも児島さんは変なライブやってたんだろうなってイメージはありましたね。

児島:あ、本当ですか?(笑)

長谷川:喋ってる時の目とか見てると狂気を感じるので(笑)

児島:あははは。出てます?

長谷川:この人はベタは好きじゃないだろって(笑)

児島:まあ確かに(笑) 私スタッフの頃は、カルト芸人さんのスタッフとかをやってたんです。へらちょんぺさんとか、みつまJAPAN'さんとかが毎月やってるライブのスタッフを始めたのがきっかけだったので。そもそも私はお笑いライブのファンじゃなくて、テレビのお笑いが好きだったんです。それで友達に誘われて手伝いに行くんですけど、事前にどんなライブか観に行こうと思って。誘う友達がいなかったのでお父さんと一緒に観に行ったんですよ。そしたらお客さんも10人いないぐらいのまばらな中、GO!ヒロミ44'さんが口に猿ぐつわしながらお客さんにムチ持たせて、「俺のケツ叩いてくれ」って言うようなライブで(笑)


──お父さん……。


児島:そう(笑) で、お父さんに「お前、本当にこれ手伝うのか?」って言われて、「まあもう約束しちゃったから一応行く」って行ったのが一番最初でした。だから全然王道なんかじゃなくて、「あ、テレビに出てるような有名な人は出てこないんだな」っていう印象からのスタートでした。



起きた瞬間、舞台上で何かやってたら面白いなと


長谷川:前も言ったかもしれないんですけど、児島さんにやって欲しいのが、「児島さんにCHARA DEを使ってもらう裏児島ライブ」。

児島:あはははは(笑)

長谷川:児島さんが60分どう使うか。で、60分やって終わったあとに、「なんでこう使ったんですか?」って聞くっていう(笑)

児島:いいですね。何やるかなあ。

長谷川:ゴリゴリのネタライブでも面白いですけどね。

児島:私も普段やりたいライブ案とか、うちのスタッフとか作家たちに投げても実行できないライブとかいっぱいあるんで。そういうのをできたら面白いかもしれないですね。

長谷川:例えばどういうライブなんですか?

児島:なんだっけな……。


──K-PRO代表なのに実行できないということがあるんですね(笑)


児島:でも私変なのばっかりで。お客さんをまず眠らせてからやるライブとか。


──どういうことですか?(笑)


児島:起きた瞬間、舞台上で何かやってたら面白いなと思って。とりあえずみんなで寝ましょうっていう。

長谷川:絶対眠らないですよ(笑) 意外とそんなライブを考えてるんですね。

児島:でもできないから(笑)

長谷川:CHARA DEでやってくださいよ。

児島:確かにCHARA DEさんは企画が面白いっていうイメージがありますからね。

長谷川:正月は餅つきましたからね(笑)

児島:へえ~(笑) やっぱりお客さんが自然と楽しい気持ちになりたい時に行く、気軽に行ける劇場ってすごくいいですよね。

長谷川:児島さんは今後していきたいこととかあるんですか?

児島:この間、名古屋と大阪でお笑いライブをやった時に、名古屋は商店街の中にある演芸場だったんですけど、商店街の方々が若手お笑いは観たことないってすごく喜んでくれたんです。普段は落語家さんとかが多いみたいで、漫才とかコントも面白いねって言われたので、今後はお笑いが根付いてない場所を探していこうかなと。しかも芸人さんが普段と違う環境だったり違うお客さんの前でやれて、すごくリフレッシュできたって言ってたんですよ。同じ漫才やってるだけなんですけど、やっぱりウケ方が違うだけでも楽しめたと。

長谷川:そういうのありますよね。

児島:だから同じネタをやる5分間でも、違う場所でやるっていうのを考えてますね。それが劇場の雰囲気だったりでもいいんですよね。広い劇場でもいいし、劇場と呼べないような場所でもいい。そういった意味でも今回の単独は楽しみだなと思って。どういう笑いが起きるのか楽しみですね。一昨年の単独の倉庫でやってた時もすごい新鮮でしたし。

長谷川:今回の原宿の会場は、一昨年倉庫でやる前から「あそこでやりたい」って話してて。なかなか埋まってたりしてできなかったんですけど。居心地がよくて、面白い場所です。

児島:原宿って特に文化の発信の場所みたいな感じですしね。お笑いも昔からゆかりがあるし。異空間じゃないですけど、現実なのかわからないような場所でそういうのを観れるっていうのも絶対楽しいと思います。



フライヤーもちょっといつもより明るく


長谷川:児島さんは好きな単独の雰囲気とかありますか?

児島:私やっぱりシティボーイズさんにはすごく憧れがありまして。圧倒的、みたいなのが好きですね。あとジョビジョバさんとか。やっぱり人間のパワーみたいなところですかね。

長谷川:意外と演劇寄りなんですね。

児島:そうですね、元々はそっちがすごい好きでした。大人計画さんとか、エッへさんとか。単独ライブっていろんな人を観れるわけじゃないから、その人たちを観に行くっていうところがあるんですけど、その人たちのパワーを直にもらいに行くというか。観たあと次の公演まではずっと語れるっていうぐらいの、芸人さんの圧倒的なパワーみたいなのはほしいなと思いますね。それがシティボーイズさんとかにはあるので。セットの迫力とか、そういうんじゃなくて、人の迫力なんだろうなって。


──それは規模が大きくなっても直に来るものがあるということですよね。


児島:ありますよね。あと舞台に立つ芸人さんもそうですけど、スタッフさんとかもそれに集中して、みんながそこに力を入れてるチームワークみたいなところも私とかは見ちゃうので。そういうのでいい舞台だなとか、ちょっと息が合ってないなとか思ったりはしますね。

長谷川:なるほど。

児島:今回の単独はどこを見てほしいとかありますか?

長谷川:今回は、いつもより世界観って感じではないものを作りたくて。やっぱりみんな求めてくるんですけど、徐々に減らしていくと、昔のほうがよかったって言う人も多いし、離れていく人も多い。でもミュージシャンも、アルバムごとにどんどん変わるじゃないですか。それで離れる人もいれば、結局よかったって言う人もいるし、そうやってどんどん大人になっていかないと、どうしても表現者としての寿命が短くなっていくと思うんです。だから今回はちょっと大人な感じというか。一昨年それはちょっと見せれたと思うんですけど、去年また世界観っぽくなりましたね。今回はそれをいろいろ混ぜた、すっきりしたものを見せたいなと思います。

児島:お客さんが飽きないですね、それは。追っかけて見るもよし、今から好きになるもよし。

長谷川:フライヤーもちょっといつもより明るくしたんですよ。

児島:確かに(笑)

長谷川:毎回暗いなと思って(笑)

児島:明るい世界観みたいなのもあんまりないからいいですよね。

長谷川:結局何をやっても、その人の世界観じゃないですか。誰が作っても世界観とは言われるので。

児島:確かに。アルバムのジャケットがめちゃめちゃ暗くて人殺したみたいな時もあれば、急にポップな感じになったりとかするのって、その人の成長だったり、見えてる今の気持ちだったりっていうことですよね。

長谷川:もっと先に行きたくなった時に、一回は行っとかないと。行ってまた戻してもいいですし。何か次の段階に行かないといけないかなと。

児島:自分たちも一回経験しないと語れないですからね。

長谷川:一番よくないのはお家芸みたいな、いつも同じパターンで詰め込んで、まあ楽しいしファンも喜ぶけど、っていうことには絶対なりたくない。失敗してもいいから。だから全く形が違うものになると思います。今回そのために即興単独ライブっていうものを2回やって、リクリエーション単独という昔のネタをぐじゃぐじゃにするライブもやって。3公演、同じ照明さんと経験を積んできたので。こんなのも面白いんだ、とか。その辺に照明が置いてあって、僕らがいつでも持っていいっていう状態になるっていうのも発明したりとか。


──照明を自由に?


長谷川:そうです。蛍光灯が落ちてて、それを使うとか。いろいろ即興で試してみて、それを組み込むっていう。どうしても頭が固まってっちゃってるんで。

児島:そうですね、常に先へ先へ進んでいかないと不安になっちゃう仕事ですもんね。

長谷川:だからワクワクしますよね。






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2018年9月8日(土)

クレオパトラ第11回単独公演「散文的な景色、詩的な歩行」

1回目:開場 13:30 / 開演 14:00

アフタートークゲスト:未定


2回目:開場 17:30 / 開演 18:00

アフタートークゲスト:家城啓之


※2公演同じ内容ですが、少しだけ違いますので2公演観るとより楽しめます。

公演時間100分程度。公演終了後に数分のインターバルの後15分~20分程度のアフタートークがございます。


各公演前売り:3500円

予約・詳細

https://tiget.net/events/31749




「仲間みんなでワイワイアフタートーク」

開場 20:15 / 開演 20:30

前売り:1000円

撤収作業の中、芸人仲間と楽しく振り返る打ち上げライブ。

ゲスト:ゴールドラッシュ、やさしい雨吉本、ニュークレープデビ、リーダー、たなしゅう、ジャパネーズ、ステレオパンダ



会場:VACANT原宿

出演:桑原尚希、長谷川優貴 以上クレオパトラ

脚本・演出:長谷川優貴(クレオパトラ/エンニュイ)

構成:新妻悠太、桑原尚希、大桶純一、中村元樹

照明:渡辺敬之(仕立て屋のサーカス)

演奏:大原巧、小金丸慧

制作:大原巧、宮野風紗音

運営協力:K-PRO

協力:CHARA DE、エンニュイ

企画・主催:クレオパトラ

取材・文・撮影:岡本みっく  協力:cafe na.